訪問看護って実際どうなの?

看護

病院やクリニック、施設等で働いている同職種から、「訪問看護ってどう?」と聞かれることがあります。あまりイメージが沸かないし、転職を考えるにしても、実際どうなのか分からない。


興味はあるけど…
情報量が少ないし、色んな疾患の人が対象だから、小児や精神科の訪問もあるんでしょ?一人で行くのって怖くないの?というのもわりと聞かれます。


同じ看護師でも、在宅の現場は少し違う空気かもしれません。


実際、訪問看護は、一人で利用者さんの家に伺い、医師がいない中で判断を求められる。
そう聞くと「難しそう」と感じるかもしれませんが、実際にはその人の暮らしに寄り添える、ほっこり温かい時間もたくさんあります。


今回は、そんな訪問看護の仕事を、同じ看護師の方にもわかりやすく紹介したいと思います。訪問看護の現場で感じるやりがい、病院との違い、そして働き方としての魅力をお伝えしていこうと思います。


訪問看護とは

病院とは違う「生活の場」での看護

病院は、目の前に患者さんが来ている状態ですが、訪問看護はそれぞれのご自宅に向かいます。交通手段は、電動自転車・バイク・車で、都内は電動自転車が主な足になります。


私の勤務していた地域は、道が狭く、一方通行も多いところで主に電動自転車で移動していました。ただ、救急車ももちろん通れない道が多いので、自転車は重宝します。


雨の日は、カッパと長靴。
荷物を入れる防水バッグやビニール袋など諸々付属して荷物もたくさん必要になります。


天気の良い日は、日焼け対策は必須ですね。たまに道端で見かける、ばっちりUV対策している早漕ぎチャリはおそらく看護師かヘルパーさんです(笑)。もはや顔が誰にも見えないので、恥ずかしくも何ともなくなります(笑)。最近の夏の暑さや長さは厳しすぎるので、対策はとっても大切です。

対象となる利用者さん

対象は、全年齢・全疾患・全障がいのある方です。


しかし、そのステーションによって対応範囲は微妙に変わってきます。


例えば小児科出身の看護師が多いから、小児に特化したステーション。同じく精神科に特化するステーションもあります。または、全疾患対応するところもあれば、終末期看護に特化しているところなど。


ステーションを作るには、看護師2.5人と資金があれば、誰でも立ち上げることができます!これについては、また別記事で紹介しますね。
「訪問看護ステーションの立ち上げ体験談|資金・人材・書類作成で知っておきたい現実」


年齢や疾患は総合病院と同じように対応はしますが、自分の経歴や力を入れたい分野を就職する際には選ぶと良いかもしれません。


そして、病院やクリニックなどの医療機関は、医療保険を使う患者さんが対象でしたが、訪問看護は介護保険や医療保険、なかには自費訪問看護など、保険の種類も関係なく対応します。

訪問看護で行う主なケア内容

病院では、治療補助業務が多く入ってきますが、訪問看護の場合に多いケアは日常の健康管理に関わることがメインになってきます。


服薬管理、療養指導、家族指導や環境整備と大事なのは多職種連携。もちろん、点滴などの医療処置が必要な方は同じように処置をします。


病院と大きな違いは、環境と道具、連携の仕方かもしれません。まずご自宅の環境は人によってかなり差があります。


広さや清潔さは想像つくと思いますが、細かく言うとエアコンの有無やベッドか布団か、近くにスーパーがあるか。それに生活やサービスに使える金銭面。道具が違うというのは、例えば点滴をするのにハンガーをかもいに掛けて使ったり、ペットボトルを陰洗ボトルにしたり、おむつを敷いて洗髪したり。


ベッドも介護用かそうでないか。せっかくの介護用ベッドでも、物に溢れていたり、壁側につけて設置していたりと。


病院で当たり前にできていたことはできない事が多いです(笑)。


訪問診療の先生と連携して医療的処置を行うのですが、点滴の必要なセットは最小限で、医療機器のメーカーも様々です。使い慣れていないものに出会うことも(今は動画で使い方などすぐ検索できます、携帯でその場で検索は訪問の世界では当たり前なのでご安心を)。


連携の面では、病院のようにすぐそこに先生やSWさんが居ないので、ほとんどが電話連絡を取り合います。介護保険ではケアマネージャーさんとは特に密に連絡し合いますね。


最近は、MCSやSlackなどのICTツールで連絡が取りやすくなってはいますが、今でもFAXはよく使う業界です。Z世代の方には衝撃かもしれませんね(笑)。


記録は、ほとんどが介護用ソフトを導入しているので、手書きというところも中にはあるかもしれませんが、社用携帯やタブレットなどを使ってその場で可能であれば訪問記録をとっていくことが主になっています。


手書きカルテ経験者としては、どちらも利点欠点がありますが、病院と同じく、記録の手間や時間は少しずつ改善して欲しい点ですよね。


訪問看護師の1日の流れ

時間帯内容
午前の訪問朝礼で一日の予定確認や調整を行う。
2~3件ほど訪問し、バイタル測定や処置、服薬管理を行う。
移動の合間に記録や他機関連絡。
昼休憩と記録事務所で休憩しながら、スタッフ間で情報共有も。
事務所以外でそれぞれ休憩OKなステーションもあります。
午後の訪問や多職種連携午後も2〜4件訪問し、医師やケアマネとオンライン連携。
帰社後の記録・報告記録をまとめ、カンファレンスで1日の情報を共有。
その他雑務(ユニフォーム洗濯するところも)

これはあくまでも例なので、件数もステーションや繁忙度で前後します。


また、担当者会議や退院前のカンファレンス(会議)なども行われるので、その際は管理者とスケジュール調整を行います。


休みを取る場合は、スケジュール管理を行っている管理者や事務さん、もしくは自分で訪問日時の調整をします。


担当制のスタイルをとっているステーションや、チーム制をとっているステーションによって、スケジュール調整方法は様々だと思います。24時間体制をとっているステーションが殆どなので、緊急時対応の当番も同じように調整します。


直行直帰ができるステーションもあったりしますし、カンファレンスは最小限にし、オンラインで会議をすることもあります。


病院看護との違い

医師がいない環境での判断力

訪問によっては、複数名訪問という形が必要な場合もあります。


その際は、看護師や准看護師、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などと複数名で訪問します。


ただし、複数名で訪問するには条件があるため、ほとんどの訪問は一人で訪問します。


初めての訪問看護だから一人で行くには、しっかり教育体制のあるところがいい。という方は多いと思うので、面接の際にどのような体制でどのくらいの期間、同行(いわゆるOJT)がつくのかは確認した方がいいポイントだと思います。


本題の医師との連携という点では、病院のイメージで言うと、夜勤中の医師との電話連絡といった感じです。


ただ、例えば緊急時に呼んでも、当直医がすぐ近くに待機しているわけではないので、すぐには来られないことも多いです(多くの先生は車移動)。


その際は、電話連絡で緊急時指示を仰ぎます。もしくは、予め緊急時のことを想定し、方針が決まっていることもあるので、その際、緊急を要する場合は、事後連絡になることもあります。


現場も連絡もすべて一人なので、ハンズフリーで話しながら、処置をするという事もあります。携帯やタブレットが支給されていることが多いので、一度に色々使えるのは便利ですね~。


もちろん応援を呼んだり、管理者に指示を仰ぐこともできますから、一人で行きますが、一人で抱えなくて大丈夫です。


そして、これは大きな声では言えませんが、病院の医師よりも在宅の医師は、とっても優しい先生が多いです。たまに強烈な先生も居ますが、本当まれ(笑)。

夜勤はないけど、緊急時対応はあるところが多い

最近は、ステーションの24時間体制化が進み、24時間対応体制加算を届け出ているステーションは7〜8割程度。ただし、実際の夜間・深夜訪問やオンコールなどの体制はステーションによって違います。


小規模で対応しきれなかったり、当番が連日続いてしまうなど色々課題もあります。
このポイントも、改善して欲しいので別記事で書いていこうと思います。


訪問看護に夜勤そのものはありません。
(早番や遅番などもあまり聞いたことはありませんが、365日24時間対応に力を入れているステーションは細かいシフト制のところもあるかもしれません。)


夜勤が無いのは、人間らしい生活ができて嬉しい!と思いますが、この緊急時の当番はあるので、夜中に呼び出しがあって眠れていないまま昼間働くということは発生してしまうのが現実です。


中には、夜間対応があった場合は、午前中休みに代替えできるようなシフトが組めるステーションもあるようですが、規模が大きいステーションでないとなかなかその仕組みは難しいんですよね。


緊急対応をした場合、「待機」いわゆる当番をするという時点で手当がついたり、さらに電話対応だけでなく、実際緊急訪問した場合にプラスで手当がつくようなステーションもあります。


病院の夜勤手当には到底及ばない金額設定のところが多いですが、ステーション近くに住んでいるなど条件つきで住宅手当などが支給されるところもあるようです。

「患者」ではなく「生活者」と関わる看護

利用者さんの対象は全年齢・全疾患ということもあり、みなさんの健康状態もほんとうに様々です。元気に歩いて、リハビリを一緒にできる方もいれば、終末期の方もいます。


ただ、基本的には自宅療養ができる方が対象になるため、その方々の生活を目の当たりにしますし、実際居住している空間に自分たちが入っていく形なので、病院では見れなかったその人の暮らしを見ることができます。


洋服を着て、好きな紅茶を飲んでいたり。買い物直後で、「今日はこれが安かったのよ~」なんて会話もできたりする。近所のお得情報やおいしいパン屋さんの話など、ほっこりタイムは病院と大きく違うところかもしれません。


訪問時間は、状態などによって変わってくるのですが30分や60分が多いので、そんな会話にも余裕は持てます。


実際、利用者さんの話が止まらなくなって時間がちょっとオーバーしてしまうなんてこともあります(笑)。


訪問看護師という選択肢

働き方の選択肢としての訪問看護

私も、はじめは病院勤務が長かったこともあり、すごく緊張と不安がありました。
けれど、自分のそれまでの経験を活かせる場でもありました。


保険のしくみが複雑だったりはしますが、最近は無料のセミナーも多かったり、
前述したように、利用者さんとのホッコリタイムも多かったり。


病院ではしっかり時間がとれなかった、
もどかしいやり取りも、解消される部分は多いです。


急性期の患者さんは見ることは少ないですし、医療的ケアも少ないのですが、
その分他のケアもできるというのも特権かもしれません。


そして、一見難しいと感じる全疾患を看るという感覚よりも、病気をもっている人という感覚が強いのもあり、その人が何で困っていて、何にケアが必要なのか、より感じ取ることもできます。


経験のない疾患をもった利用者さんと関わることで、
新たな発見や勉強できることも多いです。


経験を活かせる分野、学び直せる環境

もちろん病院のスキルも活かせます。
良い意味で、看護師さんと呼ばれなくなることも。
名前で呼んでくださることは増えます。


そして、より個別性のある関わり方ができますね。
これがとても私は面白いところでした。
生活パターンや環境が見える分、工夫できるところがないか、
多職種と考えられるところです。


また、関わる期間も年単位の方も多いので、
じっくり看護をしたいという方にはお勧めしたいです。


はじめの方にも少し書きましたが、保険の仕組みが複雑な分、
新たな発見や視点を味わうこともできます。


いきなり全部覚える必要もないので、セミナーやテキストで少しずつ学べば十分です。
病棟にシフト調整が得意な人がいるように、保険制度に詳しい人も必ず居ます(笑)。


さいごに

訪問看護は、病院とはまた違う看護のかたちがあります。
医療と生活をつなぐ仕事であり、看護の原点を感じられます。


もし気になる方がいらっしゃったら、
ひとまずどこかのステーションの見学に行ってみるのも良いかもしれません。
ステーションのカラーも自分に合うところが見つかるかもしれません。


新しい看護の世界が、きっと見えてくると思います。



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