食事の仕方は、仕事の仕方

看護師エッセイ

食事の仕方に表れる?

病院勤務の時も、訪問看護の時も、
“人生の先輩”から大切なことを教えていただくことが多々あります。


まだ管理者になるなんて想像もしていなかった頃。
ある利用者さんが、まるで未来の私を見透かすように、訪問のたびに色々なアドバイスを熱心に話してくださいました。

その方は長年、国の仕事をはじめ、さまざまな大きなプロジェクトを経験されてきた方で、 「見ていれば分かる。あなたはこれから立場が変わっていくはずだから。」と、ご自身の体調よりも、私の未来を気にかけ、いつも温かく話してくださいました。


その中で、今でも忘れられない話があります。


「一緒に働く人とは、一度食事に行ってごらん。
食べ方を見ると、その人がどんな仕事をするか分かるから。」


最初は半信半疑でしたが、
話を聞くほどに「なるほど」と思う視点がたくさんありました。


食事に行く前の行動。

メニューを見るときのちょっとした所作。

オーダーの仕方。

食事が運ばれてきた瞬間の気遣い。

食べているときの姿勢。

そして、食べ終わったあとのふるまい。



その一つひとつに、普段の仕事の姿勢やその人らしさが隠れているのだと、丁寧に教えてくださいました。

食事に行く「前」に出るもの

まずは食事に行く前の段階
自分から声をかけたり、日程をまとめてくれる人がいます。


これは仕事でいうところの、 全体を見て、前向きに動ける人


反対に、いつも受け身で、誘われるまで動かない人は、 業務でも改善や挑戦を避けがちなタイプだと、その方は話していました。

メニューを見る時に現れる気遣い

次にメニューを見る時
一人でメニューを抱え込まず、相手にも見やすいように渡す。
「これ美味しそうだね」と提案したり、相手の好みをそっと気遣ったり。


これは仕事でいうところの、 相手の状況や必要なものを読み取りながら動けるかどうか


メニューを独り占めしてしまうような人は、 仕事でも“自分だけ”になりやすいと教えてくれました。

オーダーと配膳で分かる「人への姿勢」

オーダーする時は、店員さんへの態度にその人の本質が出る。 飲み物が無くなった相手に気付けるかどうかも、仕事での気配りに直結します。


そして料理が届いた時。 熱いお皿を手渡すときに「熱いので気をつけてね」と添えられる人は、 相手が喜ぶ仕事、求められていることを察しながら動ける人だと、その方は言っていました。

食べている最中に見えるチームワーク

食べている時は、会話のテンポや、 相手のペースに合わせる余裕があるかどうか。


なんでも自分だけ先に手を伸ばさず、 場の空気を見ながら楽しめる人は、 チームとして動く力がある人


小さな場面に、驚くほど多くの情報が隠れているのだと気付かされます。

食べ終わった後に残る「その人の後ろ姿」

食事が終わった時
皿を軽くまとめたり、場を整えてから席を立つかどうか。


誰かがごちそうしてくれた時には、 きちんとお礼を伝えられるか。


その方は「食べ終わった後の姿には、その人の生き方が出る」と話していました。


―― その言葉が、
今でも私の中に残っています。


仕事も同じで、最後まで丁寧にできる人は、自然と周囲から信頼されていきます。

おわりに

食事は、毎日の小さな時間。


でも、その小さな時間の積み重ねの中に、 私たちの癖や、生き方の姿勢がそっと表れるように思います。


食事という何気ない場面の中に、人への気遣い、姿勢、チームワーク。 大切なものは、日常の中にあるのだと教えて下さった、忘れられない話です。


誰かと食事をする時間は、ただの食事ではなく、その人を知るひとつの“窓”なのかもしれません。


「この人はどんな仕事をする人なんだろう」
食卓を囲む中で、その丁寧さや優しさ、働き方のスタイルが、そっと見えてくるように思います。