はじめに
病院や施設での看取りだけでなく、在宅で最期まで過ごしたいという方も増えています。しかし、自宅でどのように最期まで過ごすのか、実際はあまりイメージがついていない方も多いのではないでしょうか。
そのため、在宅での看取りは「どこまで家でケアしてもらえるの?」「どうしたらいいか分からない」「混乱したらどうしよう」「病院とは何が違うの?」など、様々な不安がつきものだと思います。
でも、あらかじめ起こりうることを知っておくと、安心につながると思います。今回は、在宅看取りの流れと、ご家族が知っておくと安心できるポイントをまとめました。
最期の場所として在宅を選ぶ人は増加傾向
最期の場所として在宅を選ぶ人は増加傾向です。
日本における亡くなられた場所の内訳は、厚生労働省の人口動態統計で公表されており、近年は在宅で亡くなる割合が増加しています(e-Stat:人口動態統計)。
- 2000年時点では、医療機関(病院・診療所)での死亡割合は約 81.0% でした。
- 同時点の自宅(在宅死)の割合は約 13.9% でした。
- 2023年の統計では、自宅で亡くなる割合(在宅死)は約 17.0% に上昇しています。
- 同時に、医療機関での死亡割合は約 65.7% に低下しています。
- 施設(介護施設・高齢者施設など)で亡くなる人は約 15.5% です。
歴史的な変化
数十年前に比べると、日本では「病院での死(医療機関死)」の割合は減少傾向にあります。厚生労働省の人口動態統計によると、2000年時点では医療機関で亡くなる人は約 81.0% でした。一方で、自宅(在宅死)や施設での死亡割合は徐々に増加しています。
- 施設(介護施設・高齢者施設など)で亡くなる割合は、2000年にはわずか数%でしたが、2023年には約 15% に上昇しています。
- 在宅で亡くなる割合も、2000年には約 13.9% だったのが、2023年には約 17% に増えています。

補足・背景
この変化の背景には、高齢化の進展、介護・在宅医療サービスの整備、医療・介護の受け皿の多様化(施設の増加、訪問医療・訪問看護の拡充など)があるとされています(厚生労働省:人口動態統計)(厚生労働省:地域包括ケアシステムの推進)。
ただし、地域や個人の状況(持病、家族の支援体制、施設の空き状況など)によって、実際の「最期の迎え方」は大きく異なります。
在宅看取りとは?病院との違い
すごく端的に言えば、病院は「医療中心」。
在宅は 「その人の生活と家族のペースを中心」 に進みます。
- その人らしい最期を迎えられる
- 家族が自然に寄り添える
- 病院のような処置や音がなく、穏やかな時間が流れる
- 慣れた場所で過ごすことができる
“医療”よりも“生活の中での看取り”が特徴です。しかし、それがメリットとなるか、デメリットとなるかは、状況により変わってきます。
心身の状況はもちろん、在宅で過ごすためのサポートやご家族の健康状態に自宅環境、金銭面などの多角的に考慮する必要があります。
在宅で過ごしたい場合は、主治医の先生と事前に意思を伝えて、どのようなサポート体制の準備が必要かを話し合っておくことは、とても大事なポイントです。
看取り前に知っておくと安心できること
- 夜間や休日でも、訪問看護や訪問診療医に連絡できる
- 必要に応じて訪問(医師・看護師等いずれも)頻度を調整できる
- 苦痛症状に対して、訪問診療医や緩和ケア医と相談できる
- 症状に応じて緩和ケア一時入院等の入院も選択肢にある
- 家族がつきっきりでなくてもよい
- 徐々に寝ている時間が増えていくのは自然な体の変化
- 酸素や点滴、医療用麻薬も在宅で受けられる
このことを知っておくだけでも、不安は大きく減るかと思います。
最期の数日〜数時間に起こりやすい変化
すべて“自然な変化”です。
- 食事・水分がほとんど入らなくなる
- 飲み込む機能(嚥下機能)が低下する
- 眠っている時間が増える
- 呼吸が浅くなったり、ゆっくりになる
- 手足が冷えてくる
- 時間の感覚がゆっくりになる
どれも「苦しいから」ではなく、身体が静かに終末期に向かっているサインです。自然に意識が低下していくことで、苦痛を感じにくくしているとも言われています。
ご家族向けのパンフレット ➡ OPTIM『これからの過ごし方について』
ご家族ができること
- 手や背中にやさしく触れる(タッチング)
- 好きな音楽を流したり、好きな香りを楽しめる
- 無理に話しかけなくてもよい、そばに居られる
- 静かな空気をつくるだけで十分
ご家族ができるタッチングは、オキシトシンの分泌を促し、ストレス軽減や心身の安定につながることが知られています。実際に触れることがなくても、普段の慣れた生活音は、やわらかく安心をもたらしてくれます。
訪問看護はどこまでサポートしてくれる?

- 苦痛症状の緩和
- 清拭や体位調整
- 医師との連携
- 家族の精神的サポート
- 亡くなったあとの説明や最期のケア(エンゼルケア)
オムツ交換や口腔ケア、飲み込みが変化したときの食事介助の方法、吸引方法、貼り薬や座薬等の薬の服薬方法、尿の管の管理方法などのケア方法を指導・実施します。
これらのケアのすべてをご家族が行わなければならないわけではありません。しかしながら、病院とは違うため、ご家族の協力がないと過ごせないのは事実です。(一人暮らしの方でも自宅で最期を迎えるのは不可能ではありませんが、多職種サポート体制を作るのは必須です)
そして、ご家族の思いやマンパワー等の状況に応じて、誰が何のケアを担うかは綿密に計画を立てて、看護師以外にもヘルパーさん等に入って頂くことがほとんどです。
介護保険や医療保険によって多少の違いはあるのですが、多職種のサービスをケアの内容や頻度に応じて組み立てていくイメージです。
訪問時にご家族が付き添っている必要がないこともあります。状態を共有し、訪問時にご家族が買い物や気分転換に出られることもあります。また、最期の瞬間に立ち会いたいという希望がない場合、通常通り仕事に出られたり、外出されたりすることもあります。
最期の迎え方はそれぞれ違うので、ご本人・ご家族の意向に沿ってサポートします。
後悔や辛さを減らすために知っておいて欲しいこと
- 完璧な看取りは存在しない
- 一緒に過ごされた時間、“質”が大切
- 感情は抑え過ぎず、泣いても笑っても良い
- そばにいるだけで、十分愛情は伝わる
- 最期の息を引きとる瞬間を見届けられなくてもいい
- 上手にケアができなくてもいい
- ちゃんとご自身の心身を休める時間を設けた方がいい
- 一度決めたことが揺らいでもいい(選択肢は1つではない)
まとめ
最期の時間は、不安が多いかもしれません。
「のど元がゴロゴロ言って苦しそうだけど大丈夫かな?」「眉間に皺が寄っているけど、どこか辛いのかな?」「便がしばらく出てないけど大丈夫かな?」「お尻が赤くなってきているけど、体勢が辛いのかな?」など。
実際に、目の前で最期を迎える過程を見たことがないと、ひとつひとつの変化がとても気になるかもしれません。けれど、自然な変化であることも多く、慌ててなにか特別なことをしなくても大丈夫です。
体は十人十色で、持病や体力などによって変化の現れ方も人それぞれです。予測できない変化が起こることも珍しくありません。だからこそ、誰も責めたり後悔したりする必要はない、ということを知っておくと少し気持ちが楽になるかもしれません。
色々な不安がある中、ご本人・ご家族が最期まで自宅で過ごすと決めた選択は、勇気がいることだと思います。そしてなにより、穏やかで、ゆっくりと、心を寄せられる選択肢の1つだと思います。
1人でも多くの方が、不安や疑問を抱え込まずに、その人らしい最期が迎えられますように。



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