中堅・ベテラン看護師が抱えやすい悩みと、時代を越えて心を守るためのヒント

看護
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はじめに

私自身、氷河期世代に看護師になり、怒鳴られる教育を受け、必死にメモをとりながら覚えた時代を走ってきました。

でも今は、“叱らない育成”が求められるようになり、まるで違う価値観の中で新人指導や役職の役割を担うことになり、いわゆる中堅やベテランと呼ばれるようになった時、どう折り合いをつけていいのか…と何度も悩んでもきました。

看護師としての経験を重ねていくと、
仕事の幅も、見える景色も、担う責任も大きくなっていきます。

中堅になれば “できて当然” の空気が生まれ、ベテランになれば “判断” や “決定” を任されることも増える。

喜びもある一方で、「こんなはずじゃなかった」「なんだか休む暇がない」そんな感情が静かに積み重なることもあります。

時が経てば時代も変わる。どの時代を生きていても、世代のギャップは必ず感じることだと思います。

そして、その”ギャップ“や”ゆがみ”を一人で抱えてしまう人も少なくないと思います。

この記事では、中堅〜ベテラン看護師の立場の違い、抱えやすい悩み、
そして少し心が楽になる考え方をまとめました。


役職は上下ではなく “役割” であるはず

役職がつくと、一気に周囲の目が変わることがあります。

  • 「主任なんだからできるよね」
  • 「判断してほしい」
  • 「教育もお願いね」
  • 「管理者なんだから全部やるべき」など

でも、本来役職は 上下ではなく“役割の違い” であるはずです。現場ではどうしても上下のように扱われたり、期待だけが上乗せされたりする。

経験や知識があるからこそ任される立場ではあるけれど、“急に人格まで強くなるわけじゃない” ですよね。

役職者になった瞬間、昨日までと同じ人間なのに、急に「判断できて当たり前」「調整できて当然」という目で見られる。

でも、実際は誰もその役割の担い方を教えてくれないまま、肩書きだけが先に与えられてしまうことも多いのです。

どんな立場でも、迷うし、悩むし、弱い日だってある。けれど、現場は待ってくれません。そこに、大きな負担が生まれます。

私自身、役職がついたからといって突然偉くなるわけでも、急に完璧になれるわけでもないのに、周囲からの期待だけが先に重くのしかかるように感じたことがありました。

「役目」だと頭では分かっていても、その「役目」を果たすために必要な経験や判断力は、時間をかけてしか育たないんですよね。ちゃんと自分自身で、それを理解しておくことはとても大切だと思っています。


中堅もベテランも、“途中の立場”ならではの板挟みがある

中堅もベテランも、現場と管理、理想と現実…。そのすべての“途中”に立つポジションです。

だからこそ、板挟みが起きやすいのです。

  • 上からの期待と、現場の疲弊
  • 新人の育成と、自分の業務
  • 役職者の視点と、看護師としての気持ち

「こっちを立てると、あっちが立たない」
そんなジレンマが日常の中に潜んでいます。

後輩の気持ちも分かる。
上層部の期待も分かる。
でも、自分の体力も気力も限界があって…。

どちらかを優先すると、どこかに負担が生まれる――そんな状況が続くと、正直バーンアウトしかける日もありました。


中堅看護師とベテラン看護師の比較表

長く働けば勝手に“ベテラン”だと思われるのに、自分の中ではまだ迷いも不安もあって、「ベテランって何だろう?」と感じる瞬間が何度もありました。

新しく働きはじめた職場なのに、経験からベテラン扱いされ、何でも任されてしまうことも。

以下は、立場の違いを整理したものです。

項目中堅看護師ベテラン看護師
経験年数3〜7年目8〜20年以上
主な役割日常業務の中心、後輩の初期育成、判断補佐現場の全体把握、複数の後輩育成、判断・調整
求められるスキル安定した技術、コミュニケーション、基礎教育高度判断力、調整力、マネジメント
抱えやすい悩み板挟み、評価の厳しさ、役割の曖昧さ責任の重さ、孤独感、管理と現場の葛藤
バーンアウト要因“できて当然” の圧、育成ストレス過重責任、“見えない調整労働”

どちらが楽、どちらが大変という話ではなく、それぞれの段階に固有のしんどさがあるということが伝わると良いなと思います。


氷河期世代が抱えやすい「教える側のしんどさ」

私たちの新人時代は、今では考えられない指導を受けてきた人も多い世代です。

  • 「怒鳴られるのが当たり前」
  • 「仕事は見て覚えろ」
  • 「正解が分からないまま叱責される」

そんな環境を通ってきたからこそ、
いざ自分が“教える側”になった時、
どう振る舞えば正しいのか迷ってしまうことがあります。

「怒られる教育」を受けてきた人が、今の優しい指導に戸惑う理由

昔はミスをすれば強く叱られるのが当たり前でした。そんな環境で育った人ほど、“相手がどう感じるか” を過剰に考えてしまい、言葉を選びすぎて伝えることが難しくなると思います。


優しく丁寧な伝え方が求められる今、「どこまで言っていいのか」「どう伝えれば傷つけないのか」と悩みが深くなることもあります。

今は“怒らない・叱らない教育”の方針が主流。

  • 自分が教わった方法は使えない
  • でも、優しく教えるだけで現場は回らない
  • 責任は重く、評価は厳しい
  • それでも後輩の気持ちは大切にしたい

この矛盾を抱えながら進むのは、
本当に大きなストレスになります。

氷河期世代が「丁寧に働きすぎてしまう」背景

就職氷河期の頃は、正社員の枠が限られ、どれだけ頑張っても報われるとは限らない時代でした。だからこそ私たちの世代は、「努力し続けないと居場所がなくなる」という思いが無意識に根付いています。

その結果、求められている以上に丁寧に働こうとしたり、気配りをしすぎて疲れてしまうことが少なくありません。

「役職があるから」ではなく、“丁寧に働いてきたから”疲れる

自分が弱いのではありません。

むしろ――

  • 空気を読み
  • 場を整え
  • 人を傷つけないように気を配り
  • 自分が穴をあけないよう必死で踏ん張ってきた

それができる人だから、役職を任されたのだと思います。けれど、丁寧に働ける人ほど、丁寧に傷つくと思います。

それが中堅〜ベテランのつらさでもあり、同時に優しさの証拠でもあると思います。


役割を果たしながら、自分をすり減らさないために

役職や経験年数が上がるほど、
“できないと言いにくくなる”プレッシャーもあるかもしれません。

けれど、役職は役割であって、その人の価値そのものではないことは、何度でも認識しておいた方がいいと思っています。

私自身、このことが曖昧になったり、薄らいだりすることで、他者に評価を預けてばかりで、すごく苦しみました。

できる日もあれば、できない日もある。
判断が迷う日もある。
誰かの言葉に落ち込む日もある。

そんな “当たり前の弱さ” はどの立場でも何時でも持ち込んでいいのです。


少し楽になるためのヒント

ベテランでも、中堅でも、
どの立場にいても使えるヒントをまとめてみました。

●「できること」と「できないこと」を明確にする

全部抱える必要はありません。抱える量が多すぎることも。

●言葉にする勇気を持つ

「それは私の役割ではありません」この一言が、自分を守ってくれます。線引きは逃げではなく、プロとして続けるための技術です。

● 役割を一人で完結させない

弱音=無責任ではありません。
むしろリーダーは弱音を言える人の方がチームが安定します。

● 自分の感情に“正直でいる”

無理をしないことは、現場を守ることにもつながります。

簡単なようで、実は難しいことかもしれません。すべてうまくいかなくても、これはやってみようかな、これならできるかもと思うことから実践してみるのもいいと思います。


おわりに――すでに十分にやってきた

中堅でも、ベテランでも、氷河期世代でも。それぞれが重ねてきた苦労や背景は、決して誰にも完全には見えません。お互いに理解されにくく、時に誤解されやすいものです。

だからこそ、それぞれがしっかりと知っておいた方がいいと思うのです。

「私はよくやってきた」
「時代の変化に翻弄されながらも、誠実に向き合ってきた」
その事実は消えません。

お互いに見えないことがあっても、相手のことを尊重し合えるよう、悩んでいることをオープンにすることも必要だと思います。そして、弱みが話せることは、強みにもなります。

そして、役職に対する考え方を少しずつ柔らかくしながら、「役目としてのリーダーシップ」を築き直す時期なのかもしれません。

それぞれが積み重ねてきた経験は、誰かの日常を救い続けています。


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