ながら作業の集中力と生産性――マルチタスクをうまく活用する方法

健康
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はじめに

私には、無意識にしてしまう「ながら作業」があります。
特に不思議なのは、歯磨き。

なぜか、歯ブラシを口に入れた瞬間、
・急に思いついたり
・別の事を始めたくなったり
・考えが勝手に広がっていったり

そんなことが起こるときがあります。

「歯と脳って、どんな関係なんだろう?」
そんな素朴な疑問から、ながら作業について調べてみました。


ながら作業は本当に悪いの?

一般的には、
「ながら作業=集中力が落ちる」
と言われることが多いようですが、
実は全部が悪いわけではありません。

脳科学では、
ながら作業は大きく2つに分けて考えられています。


「良い」ながら作業

「自動化された動き」+「軽い刺激」
片方の作業が自動化されていて、
もう一方に注意を割けられるような、ながら作業です。

例えば、

  • 歯磨きをしながら考えごと
  • 散歩しながらアイデアを練る
  • 洗い物をしながら音楽を聴く

このとき脳では、

  • 体の動き → 小脳・運動野
  • 思考や発想 → 前頭前野

と、役割分担が起こっています。
この場合、複数の脳領域が連携して働いていて
一見疲れるように思われますが、
実は、負荷は適度で快適なのです。

なぜなら脳には、
デフォルトモードネットワーク(DMN)
注意制御ネットワーク など複数のネットワークがあります。

バランスよく使う場合はむしろ効率的で、
各領域が役割分担することで、
特定の領域への負担が分散されるからです。

その結果として、

  • 緊張が下がる
  • 発想が出やすくなる
  • ぼーっとしすぎず、考えすぎない

という状態になりやすいことが分かっています。


「疲れる」ながら作業

「判断が必要な作業」+「別の判断」
両方とも注意を要する作業を同時に行う、ながら作業。

例えば、

  • SNSを見ながら文章を書く
  • 人の話を聞きながら考えごと
  • 休んでいるつもりで情報を浴び続ける
  • 運転しながら難しい計算をする

このときの脳は、瞬間的に
前頭前野を同時に使い続けます。

この「切り替え=タスクスイッチング」を
強いられることで、疲労がたまりやすいとされています。

前頭前野(集中・意思決定) がフル稼働すると、
負荷がかかり続けるため、

  • 疲労感
  • 集中力低下
  • 感覚のズレ(注意資源が分散して、一時的に認知の精度が下がる)

につながると言われています。


歯磨きで考えごとが始まる理由

歯磨きが「良いながら作業」になりやすい理由はいくつかあります。

歯や口は、脳ととても近い

口腔は、
三叉神経という太い感覚神経で脳と直結しています。

歯磨きや咀嚼刺激が、
三叉神経を介して脳幹の覚醒系に影響して、
前頭前野を含む脳の活動が間接的に促される可能性があると考えられています。

つまり、眠くなりすぎず、緊張しすぎない状態になりやすいと考えられます

ガムを噛んだり、食事の咀嚼が
リラックスできるのもこのためです。


ミントの香りの覚醒作用

歯磨き粉のミントには、
注意力を高める作用や
軽く覚醒させる作用があるとされています。

コーヒーほど強くないけれど、
頭が切り替わり、爽快感も得られます。


単純作業だから、思考が自由になる

日常にある歯磨きは、
「考えなくてもできる動き」の1つです。

このときの脳は、
デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)
と呼ばれる回路が働きやすくなります。
意識的な作業が不要なときに活発になるネットワークです。

これは、

  • 内省(自己認識)
  • ひらめき(情報処理)
  • 過去や未来をつなぐ思考
    (記憶の統合や未来予測)

「なぜか思いつく」の正体の一端と考えられています。


集中力や生産性との関係

項目良いながら作業疲れやすいながら作業
集中力高め(部分的集中)持続しにくい
脳の負荷分散して軽い前頭前野に集中して重い
生産性少し低下することあり大幅に低下することあり
散歩+オーディオ学習読書+計算、運転+メール

脳科学的には、
生産性は、情報処理速度と正確さの掛け合わせを目安として考えることができます。

「良いながら作業」では、集中力は保たれるものの、注意資源が分散するため、作業1つあたりの速度や精度は単独作業よりやや低下することがあります。

心理学的には、

  • 片方の作業が自動化されているため、意識的注意は主に1つの作業に集中できる
  • ただし、注意が分散することによる心理的負荷は完全にはゼロではない
  • 同時に行う作業が互いに干渉すること(認知的干渉)で作業効率が下がることもある
  • 一方、軽い運動やBGMなどで心理的快感が得られる場合は、集中が持続しやすくなる

まとめると、
「集中力はあるけれど、生産性は単独作業より少し低下する」状態になるのです。


ながら作業は、悪い癖ではなく“調整法”?

私たちは、疲れているときほど、
無意識に「ながら作業」を選んでいる場合があります。

それは、
自分の神経を保つための知恵なのかもしれません。

けれど、どんな「ながら作業」が回復につながるのか、
どんな「ながら作業」が消耗につながるのか。

集中力の感覚は同じでも、
脳の疲労度や生産性が大きく違うのです。

これを知っておくことは、
一部の脳の領域に負担を掛けずに、
心地よく、楽に、情報処理や自己認識等ができる。
脳のすごみや、面白さも感じられます。


おわりに

仕事や家事など、
たくさんのことを同時にしなければならないとき。
そんな時の「疲れるながら作業」は、
どうしても避けることはできないかもしれません。

けれど、
すべてのながら作業が悪いわけではないということも
知ることができました。

歯を磨きながら、考えごとをしてしまう時。
それは集中できていない証拠ではなく、
ちゃんと自分自身を整えようとしている。
そんな、体のすばらしい反応なのかもしれません。

そして、「良いながら作業」は、
心地よく、適度にぼんやりと作業ができる効果があります。

鼻歌歌いながら、家の掃除をする。
軽く運動しながら、好きな音楽を聴く。
安全な環境での「ながら作業=マルチタスク」であれば、
脳にも心にも負担なく、心地よい時間を過ごせます。

疲れているし、時間もない。
そんなときは、自動化された動きに
ほんのり刺激があるものとペアリングする。
そうすれば、一石二鳥以上のものが
得られるような気がします。


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