「面白い」という言葉の面白さ――語源や科学をたどってみる

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はじめに

「面白いね」

日常的に多用している言葉です。
けれど、改めて考えてみると、とても不思議な漢字と響きを持っていると思いませんか。

面白い
おもしろい

漢字では、「面が白い」と書く。
ますます不思議な言葉だと思うのです。

特にひっかかりもなく、
たくさん口にしたり、耳にしたりします。

「人生を面白くする」
「物事を面白がる」
「面白い人」
「面白い発想」

こうして並べてみると、「面白い」という言葉が、私たちの生活や感情の中心に、深く根を下ろしていることに気づきます。


「面白い」の語源をたどる

「面白い」という言葉の語源には、いくつかの説があるようです。

もっとも有力なのは、
「面(おも)が白し」。
つまり、目の前が明るくなる、視界がぱっと開けるという意味から来ているという説です。

  • 面(おも)= 顔・前方・視界
  • 白い = 明るい・はっきり見える

ほかにも、
「思う」が「知る」に変わる瞬間、
つまり理解や発見の喜びを表したという説。

「重たい気分が軽やかに転じる」という
心の状態の変化を示したという考え方もあります。

どの説にも共通しているのは、
「面白い」とは、心や認知の状態が変わる瞬間を表す言葉だということ。


暗かった視界が明るくなり、
わからなかったことが腑に落ちる。

退屈だった空気が一瞬で変わり、
重たかった気持ちがふっと軽くなる。

——そんな体験を、私たちは「面白い」と表現してきたのかもしれません。


ひらがなで書く「おもしろい」のやわらかさ

漢字の「面白い」には、意味の奥行きがあります。
一方で、ひらがなの「おもしろい」には、やわらかさや温かさがあると思います。

力強さよりも、丸みがあって、
色やリズムがある。

ひらがなで書かれた「おもしろい」は、
評価や判断よりも、感情そのもの に近づいてくるように感じました。

「楽しいね」
「いいね」
「素敵だね」

そんな言葉と同じように、
誰かと感覚を分かち合うための、やさしい合図のようにも思えます。


なぜ「面白い」と感じるのか ――脳科学の視点から

では、私たちの脳は、
どんな時に「面白い」と感じているのでしょうか。

脳科学では、「面白い」と感じるとき、
脳の中ではさまざまな変化が起きています。

新しい発見や意外性に出会った瞬間、
脳の報酬系が刺激され、ドーパミンが分泌されます。

ドーパミンが分泌されると、
心が弾むような高揚感や快さが生まれます。

同時に、前頭前野では理解や納得が進み、

・「なるほど!」
・「わかった!」
・「予想と違った!」
・「そんな角度もあったのか!」

といった、知的な満足感が生じます。
驚きや理解、好奇心や安心を感じられますよね。

こうした複数の感情と認知の変化が重なり合うことで、
私たちは「面白い」と感じているのです。

だからこそ、
この言葉は、楽しい・興味深い・可笑しい・心地よい・好き、といった
多様な意味
を一つで包み込む、非常に幅の広い表現となったのだと思います。


「面白い」を生み出す脳内物質――ドーパミンの役割

ドーパミンは、脳内で分泌される神経伝達物質のひとつです。
一般的には、「快楽ホルモン」と呼ばれることもありますが、
実際には単なる快感物質ではなく、

期待・動機・好奇心・学習・行動の原動力
を生み出す、非常に重要な役割を担っています。

つまりドーパミンは、快楽的なものだけではなく、
次の行動へと人を動かすエネルギーをつくってくれる物質なのです。


快感と高揚感が生まれる

好奇心と探究心が高まる

記憶と学習が強化される

心のエネルギーが回復する


ドーパミンの働き脳・心に起こる変化私たちの体感
快感・高揚報酬系が刺激される楽しい・ワクワク
動機づけ行動意欲が高まるもっと知りたい
学習促進(海馬を活性化)記憶定着が向上忘れにくい
感情回復心の活力が戻る元気が出る

「面白い」が人生にとって大切な理由

こうして見てみると、
「面白い」と感じる体験は、

  • 感情を動かし
  • 行動を生み
  • 学びを深め
  • 心を回復させる

という、とても大きな役割を担っていることがわかります。

だからこそ、

  • 面白い
  • 面白がる
  • 人生を面白くする

という言葉が、
無意識のうちに深く結びついているのかもしれません。


「面白がる」という生き方――「○○がる」という表現

「面白い」だけでなく、
「面白がる」という言葉も、日本語ならではの表現ですよね。

日本語の「○○がる」は、
感情や感覚をそのまま言い切らずに、
少し距離を置いて眺める視点を含んだ表現です。

「悲しい」ではなく「悲しがる」、
「怖い」ではなく「怖がる」と言うことで、
感情そのものではなく、
そこからにじみ出る様子や態度を描いています。

「面白がる」という言葉も同じで、
出来事そのものよりも、それをどう受け取るかという心の向け方を表しています。

同じ出来事でも、

  • 面倒だなと思えば、ただの負担になる
  • 面白がってみると、物語に変わり、やる気も出る

物事を面白がることは、世界の見方を自分で選び取ること。
日本語の「○○がる」には、
そんなふうにとても柔らかく
奥深い生き方が込められているように思えます。

人生を面白くする力は、
出来事の中ではなく、
自分の視点の中にあるのかもしれません。


おわりに

「面白い」という言葉の語源に立ち返ると、
それは「視界が明るくなる」ことでした。

同じ日常が、少し違って見えたり、
世界が、少しだけ明るく見えたりする。

「おもしろい」という言葉の面白みや、
「○○がる」という位置や視点の大切さを感じます。

面白がることで、
世界が広がっていきます。

今日の一日が、ほんの少しでも、
「おもしろいね」と言える時間になりますように。


“Omoroi (Omoshiroi) – When the World Becomes Brighter”
Calligraphy by 筑芳 (Chikuho)

Omoshiroi originally means “the face becomes bright.”
It expresses the moment when understanding dawns,
curiosity awakens, and the heart feels lighter.


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