はじめに
訪問看護の現場で働いていると、
ときどき「これって、誰の責任なんだろう」と立ち止まる瞬間があります。
細かすぎるケアの要望。
1分でも訪問時間がずれたら怒鳴られる。
過剰なクレーム。
理不尽な要求。
それに応え続けるのは、
いつも現場の看護師。
「自分が頑張って、なんとかしなきゃ」
そう思って働けていた頃もありました。
しかし、
そんな理不尽な場面を迎えるたび、
これは個人の努力で解決する問題ではないのではないか
と感じるようになりました。
クレーム対応が「個人任せ」になる構造
クレームや困難ケースは、本来、
チームや組織全体で対応するべき問題です。
けれど現実は、
- 困難ケースほど、特定の看護師に集中する
- フォロー体制が整っていない
- 相談しても「もう少し頑張って」と言われる
- できない理由より、できない事実だけが強調される
- できていることよりも、できないことにフォーカスされる
- クレームに迎合する風潮や空気
そんな職場も少なくないと思います。
困難ケースの対応を任されたり、
フォローに回ることが当たり前になっていく。
けれど一方で、
体調不良や身体的な限界を理由に
業務内容の調整をお願いすると、
「問題があるから担当を外れた」
「できなくなった人」
そんなふうに見られてしまいます。
頑張ってきた過去は、簡単に消されてしまう。
そんな構造に、深く傷つき、
どんどん頑張れない状況になっていくのです。
「我慢できる人」が壊れていく職場
どんな職場でも、
- 我慢強い人
- 責任感の強い人
- 文句を言わない人
ほど、負担を背負わされやすい傾向があります。
「この人なら何とかしてくれる」
その期待が積み重なり、
いつの間にか”その人が壊れるまで頼られる構造”ができてしまう。
そして、
そんな人が壊れかかっても、フォローする体制が無い。
そんな構造は、本当に健全な職場なのでしょうか。
クレーマーに迎合し続ける危うさ
クレームに丁寧に対応することは、たしかに必要かもしれません。
けれど、
- 何をしても満足されない
- 支配的・攻撃的な要求
- 看護師の尊厳を傷つける言動
こうしたケースまで、
「我慢」「努力」「根性論」で乗り切ろうとするのは危険だと思います。
看護師にも、
専門職としての尊厳があります。
すべての要求に応えることが、
必ずしも「良い看護」ではありません。
できる限界を超えた時、
事業所変更や支援体制の再構築を検討することも、
立派な専門的判断だと、私は思っています。
因果応報という考えに縛られていた私
つらさが積み重なると、
私はこんなふうに考えるようになりました。
「私がどこかで誰かを傷つけたから、
こんな目に遭っているのかもしれない」
「因果応報なのではないか」
因果応報というイメージに縛られ、
過去のがんばってきたはずの自分を責め続けました。
けれど、
真面目で、人の気持ちを考えすぎる人ほど、
こうした思考に陥りやすいと言われているそうです。
だからこれは、罰でも、報いでもなかったのです。
長年、無理を重ねてきた結果として起きたこと。
心と体の自然な反応だったのだと思えるようになってきました。
個人の問題ではなく、仕組みの問題
看護師が燃え尽きるのは、
その人が悪いわけでも、弱いわけでもないはずです。
多くの場合、
- 過剰な責任集中
- フォロー体制の欠如
- 評価制度の歪み
- 感情論と根性論
- クレームへの過剰な迎合
こうした構造的な問題が背景にあります。
個人の努力に頼り切った職場は、
いつか必ず限界を迎えます。
人間性や仕事能力の高い人が、
静かに次々と去っていく職場もありますよね。
その場合、こういった構造の問題が隠れているように思います。
看護師の尊厳を守るという視点
看護師は、少し勘違いされがちですが、
「自己犠牲」を前提に働く職業ではありません。
専門知識と技術、
倫理観と判断力を持った専門職です。
我慢することが美徳。
耐えることが正解。
そんな文化から、
そろそろ抜け出してもいいのではないでしょうか。
近年は、看護職に限らず、
「頑張れば頑張った分だけ報われる」という
単純な時代ではなくなってきています。
努力が正当に評価されにくく、
経済的な不安や将来への見通しの立たなさを感じる人も
増えているのではないでしょうか。
その中で、
働き方や福利厚生、
心身の健康や生活のしやすさを重視する流れは、
とても自然な変化だと感じています。
私自身も今、
「無理をしてまで働き続けることが、本当に正解なのか」
と立ち止まっています。
それは、甘えや逃げではなく、
自分の人生と尊厳を大切にしようとする選択だと思っています。
他者からどう見えるか、と
自分から見える景色は違いますよね。
おわりに
もし今、
- クレーム対応に疲れ切っている人
- 自分を責め続けている人
- 因果応報のような考えに縛られている人
がいたら、伝えたいです。
あなたの苦しさは、あなたのせいではありません。
それは、
あなたが真面目で、誠実で、
人を大切にしてきた証です。
どうか、自分を責めすぎないでください。
看護師が壊れない職場は、
結果的に、利用者さんや患者さんのためにもなる。
そう信じています。
因果応報と言うと、
つい悪い事を連想してしまいがちですが、
善い行いは良い事としてちゃんと返ってきてくれます。



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