看護師のためのグリーフケアという理想

看護

「支える人」を支える仕組み

看護師など、普段誰かのケアをする側へのケアについて考えていきたいと思います。前回の記事では、世界の看護師の働き方やサポート体制にも少し触れています。

心身の疲労などから離職してしまう人もおり、その仕組みがもっと気軽に利用され、もっと浸透して欲しいという思いもありました。

そして、看取りや急変等、立て続けに経験した時は、もっとサポート体制が整っていたり、自分の知識や行動力がもっとあれば良かったなと、切に思った経験もあります。

グリーフケアとは

大切な人を失ったときに生まれる「悲しみ(グリーフ)」に寄り添い、その人が自分のペースで気持ちを整理し、少しずつ日常を取り戻していけるよう支えるケアのことです。悲しみは涙だけでなく、怒りや後悔、無力感、身体の不調として現れることもあります。グリーフケアは、それらの感情を無理に抑え込むのではなく、「そのまま感じていい」と認めることから始まります。医療や看護の場では、遺されたご家族だけでなく、看取りに関わった医療者自身にとっても、心を守る大切なケアとして注目されています。


「支える人」の抱えていることや離職の現実

看護師は、日々「別れ」に立ち会っています。 それは患者さんや利用者さんの死だけでなく、家族の悲しみ、人生の節目、人生の終わりにも寄り添います。

けれど、その悲しみを自分の中で静かにしまい込み、 誰にも見せないまま次の患者さんや利用者さんへと向かう姿もまた、現場の日常です。

では、実際の離職率は離職理由はどうなっているのでしょうか。

看護師の離職率

日本看護協会の「病院看護実態調査(2023年度・2024年公表)」によると、
正規雇用の看護職員の離職率は 11.3% です。

内訳を見ると
・新卒看護師:8.8%
・既卒・中途採用者:16.1%

となっており、中途採用者の方が離職率が高い傾向にあることが分かります。

看護師が離職・転職を考える主な理由

看護師が「辞めたい」と感じる背景には、以下のような要因が重なっています。

  • 過重労働・バーンアウト:人手不足や不規則勤務による心身の疲労。
  • 職場の人間関係・サポート不足:相談しにくい雰囲気や十分な支援が得られないこと。
  • 給与・待遇への不満:業務量に見合わない報酬や休暇の取りにくさ。
  • キャリアの不安:やりがい・専門性の伸び悩みや将来への不安。
  • 心身の健康問題:長時間勤務やストレス蓄積による体調不良やメンタル不調。

こうした負担や悲嘆への支援の不足が、看護師が離職を考える大きな背景となっています。そこで、支援のひとつとして、グリーフケアの導入が重要になると思っています。


看護師が抱える見えない悲嘆

看護師の離職には、複数の要因が重なっていることが多くあります。

日常業務の中で悲しみを抱えつつも、表に出す機会は限られています。

新人の頃、私は良い先輩方に巡り合えたことで、看取りの際に「泣くこと」も自然なこととして受け入れられる環境で学ぶことができました。

それでも、忙しさで疲れきった同僚や、せっかく会えた友人や恋人には気軽に話せないこともあり、一人で泣く日もありました。

グリーフケアの必要性

看護師にとってグリーフケアは、大事な人を失ったご家族のためだけでなく、自分自身を守るためにも欠かせない支援だと感じています。

自らの感情に気づき、悲嘆を丁寧に扱うことで、看護の質を保つためだけでなく、心がすり減ってしまわないための大切な土台になる。

突然の急変や緩和ケアでのほぼ毎日のようにある看取り、そして在宅で長く関わった方の最期――そのひとつひとつは、同時に心に深く刻まれる体験でもあります。

「また今日も看取りだった」と、淡々と日常に織り込まれる死の場面。
その裏で、看護師は悲しみや無力感、やりきれなさを抱えながらも、それを言葉にする機会を持てないことが多いのが現実です。

理想のサポートのかたち

前述した通り、看護師にとってのグリーフケアは、繰り返される看取りや急変対応の中で積み重なる悲嘆や心の疲れを無理なく整えていくための大切な支援です。

安心して話せる場があり、否定されることなく、評価のない時間が守られることで、看護師は「強くあらねばならない自分」から少し離れ、本音の感情に静かに向き合うことができると思います。

そうした空間で、言葉にできなかった喪失感や無力感がほどけて、感情を安心して安全に外に出すプロセス(感情の外在化)が促されるのです。

これは、バーンアウトコンパッション・ファティーグの予防にもつながり、自己への優しさ(セルフコンパッション)を育む土台にもなります。

バーンアウト

仕事などで意欲的に取り組んでいた人が、心身の過度な疲労やストレスによって意欲や熱意を失い、無気力な状態になる「燃え尽き症候群」。うつ病などの精神疾患につながる可能性もあります。

コンパッション・ファティーグ

他者の苦しみや悲しみに寄り添いや共感しすぎることで生じる共感疲労。

看護師が自分自身の悲嘆も丁寧に扱うことで、心のしなやかさを保つことができ、長く看護を続けていくための大きな支えになると思っています。そして、看護師のためにもグリーフケアが積極的に取り入れられることを願っています。


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