はじめに
年末年始は、普段よりゆっくり過ごせたという方も多いのではないでしょうか。
一方で、休み明けに
- 体が重い
- 呼吸が浅い
- なんとなく息苦しい
そんな感覚を覚えることもあります。
実は、しっかり休んだあとでも、
体力の低下や生活リズムの変化、寒さなどが重なると、
呼吸がうまくできていないと感じることがあると思います。
新型コロナが流行り始めた2020年。
私は病気と手術、そしてコロナにも感染しました。
それ以来毎年、年末年始は決まって体調不良を繰り返していました。
忙しさや気候の変化、免疫力も低下し、ストレスフルな状態でした。
気分転換もしたいけど、年末年始は何かと忙しいですよね。
めったに会えない友人に会う時期でもあって、飲み会が続いたり。
嬉しいことも多いけど、体は思った以上に疲れています。
そこで、この記事では、
「深呼吸がうまくできないと感じるとき」に
無理なく取り入れやすい 触れるセルフケアについて、
医学的な背景を交えながら整理してみたいと思います。
深呼吸ができない理由と体の中で起きていること
呼吸がしづらいと感じるとき、
多くの場合、体は 交感神経が優位な状態にあります。
交感神経が優位になると、
- 呼吸は浅く、速くなりやすい
- 横隔膜の動きが小さくなる
- 首・肩・胸まわりの筋肉(呼吸補助筋)が過剰に働く
- 胸郭(胸かご)の可動性が低下する
といった変化が起こります。
この状態で「深く吸おう」と意識すると、
さらに呼吸補助筋が緊張し、
かえって苦しさが増すことも少なくありません。
まずは、呼吸を深くすることよりも、
力を抜いてリラックスすることに意識を向けてみることが大切です。
そこで、力を抜くための方法として「触れる」ことを試してもらえたらと思います。
呼吸と自律神経、そして「触れる刺激」の関係
皮膚は、単なる外側の組織ではなく、
自律神経と深く関わる感覚器官です。
やさしく触れる刺激は、
- 皮膚感覚受容器を介して
- 迷走神経を刺激し
- 副交感神経の働きを高める
ことが知られています。
副交感神経が優位になると、
- 呼吸がゆっくり、深くなりやすい
- 心拍数が落ち着く
- 筋緊張がゆるむ
- 腸の蠕動運動が促される
といった反応が現れます。
これは、看護や緩和ケアの分野で
タッチングやリンパケアが用いられてきた理由のひとつでもあります。
看護や緩和ケアの現場では、
症状を直接「取り除く」ことが難しい場面でも、
触れることによって安心感を与え、
呼吸や表情の変化を引き出すケアが行われてきました。
痛みや不安が強いときほど、
言葉よりも、「そばにいて、静かに触れる」ことが
体にとって負担の少ないアプローチになる
と感じる場面は少なくありません。
なぜ「呼吸」より先に「触れる」のか
呼吸は、自律神経の影響を強く受ける生理機能です。
そして、他の臓器には珍しく、
自分の意思で、ある程度コントロールできる器官でもあります。
けれど不思議と、無理に意識的にコントロールしようとしたり、
ちゃんとやらなければと頑張りすぎたりするほど、うまくいかなくなることがあります。
一方、触れるケアは
呼吸そのものを変えようとしなくても、
呼吸が変わりやすい状態をつくるアプローチができます。
手軽で、道具も要りません。
運動のようにハードルも高くありませんし、体への負担も少ないため
体力が落ちているときにも取り入れやすい方法です。
実践しやすい「触れるセルフケア」
方法はとてもシンプルです。
- 鎖骨の下を、手のひらでやさしくなでる
- 胸骨の上から下を、面で触れる
(胸の中央、のどの下からみぞおちに向かって伸びる骨(胸骨)のあたり) - お腹を、時計回りにそっとさする
- 足の付け根(鼠径部)を、やさしくなでる
- 首をやさしくなでる
力は入れず、皮膚が少し動く程度で十分です。
赤ちゃんの頭をなでる程度の力が良いと言われています。
呼吸に合わせる場合は、
吐くときになでる/吸うときは手を止める
それだけでも、体は反応してくれます。
呼吸を助ける「姿勢」のポイント
呼吸がしづらいときは、姿勢の影響も大きくなります。
肺は、肋骨で囲まれた臓器で、肋骨は胸側だけでなく
背中側へも広がります。
色々な姿勢で肋骨を触りながら実践してもらえると、
肋骨はこんなに動くのかと意外な感覚が得られると思います。
仰向けの場合
- 仰向けになり、膝を軽く立てる
- 肩や背中が緊張しない位置を探す
- 手は胸やお腹に置くだけでもよい
この姿勢は、腹圧を調整しやすく、
横隔膜の動きを妨げにくいのが特徴です。

座位の場合
- 背もたれに軽く預ける
- 胸を張ろうとしない
- 首の後ろを長く保つイメージ
「良い姿勢」を意識しすぎると、
かえって胸郭や首周囲の緊張が強まることがあります。
楽に呼吸できる姿勢を優先します。
深呼吸は「吸う」より「吐く」を意識する
深呼吸というと「たくさん吸う」ことに意識が向いてしまいがちですが、
自律神経を整える目的では、吐く呼吸が重要です。
呼吸は、肺そのものが動いているのではなく、
胸郭や横隔膜が動くことで、
肺の中に陰圧(内側の圧が低くなる状態)をつくり、
空気が自然に流れ込む仕組みになっています。
息を吸うときは、
横隔膜が下がり、胸郭が広がることで陰圧が生じ、
空気が肺に引き込まれます。
一方、息を吐くときは、
横隔膜や胸郭の緊張がゆるみ、
肺が本来の大きさに戻ろうとする力によって、
空気が外へ押し出されます。
この「吐く動き」は、
体にとっては力を抜く方向の動きであり、
副交感神経が働きやすい状態と一致しています。
息を吐くことは、痛みも感じにくくなるほどの効果があります。
そのため、以下を意識してみてください。
- 鼻から軽く吸う
- 口から、細く長く吐く
- 吐ききると、自然に吸える
吸うことを頑張らなくても、
陰圧によって自然に次の呼吸が入ってくる感覚を得やすくなります。
吐く時間を長めにとることで、
心拍や筋緊張が落ち着き、
副交感神経が優位になりやすい状態がつくられます。
自然とあくびが出て、眠くなることもあります。
おわりに
呼吸がうまくできないと感じるとき、
それは体が弱っているサインであると同時に、
「休息や調整を必要としているサイン」でもあります。
触れること、姿勢を整えること、
呼吸を無理に変えようとしないこと。
どれも小さなセルフケアですが、
体調が戻るための大切な入り口になると感じています。
日頃の疲れやストレス。更年期症状の様々な場面でも行えるケアです。
痛みがあるときは、自然と手でさすっていることはあるかもしれませんが、
実は、自分自身の体に触れる機会はあまりなかったことにも気が付くかと思います。
辛そうにしている誰かを癒すときと同じように、
自分自身も癒すことは大切です。
呼吸や自律神経の反応には個人差がありますが、
無理のない範囲で、自分の体の反応を確かめながら
セルフケアとして取り入れていくことが大切だと感じています。
体の緊張がほどけて、
今日の呼吸が少しでも楽になりますように。

参考にした文献や考え方
- 厚生労働省:自律神経とストレスに関する資料
- 日本緩和医療学会:緩和ケアにおけるタッチング・非薬物療法の考え方
- Porges, S. W.:Polyvagal Theory(ポリヴェーガル理論)


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