はじめに
先日、ドラマの「アンメット」を一気観しました。
続編が始まると知ったのがきっかけでしたが、
思っていた以上に、すごく泣けました。
俳優さんたちの演技はもちろん、
リアリティのある演出や映像の美しさなど、
何をとっても素晴らしい作品でした。
その中でも印象に残ったのが、
医療チームの人間関係です。
仲間同士で何気ない雑談をしたり、
お互いの体調を気遣ったり、
仕事が終われば一緒に飲みに行ったり。
それぞれに個性があり、
仕事に対する思いや信念を持ちながら、
互いを尊重している姿が印象的でした。
それぞれが持っている知識や技術、
これまでの経験や努力があるからこそ、
お互いに尊敬し合える部分もあるのだと思います。
そんな姿を見て、
私自身の看護師時代を思い出しました。
一緒に働く人によって、仕事の景色は変わる
私にも、看護師として働いていた頃に、
仲間と楽しく過ごしていた思い出がたくさんあります。
仕事の相談をしたり、
何気ない話で笑ったり、
忙しい中でも助け合ったり。
色々なところへ、旅行もたくさん行きました。
もちろん、いつも順調だったわけではありませんが、
一緒に働く人たちに恵まれていたと感じる時期もありました。
一方で、
30代後半に体調を崩した頃や、
その後の訪問看護の職場では、
そうした環境とは対照的な経験もしました。
同じ医療の世界でも、
職場の環境や一緒に働く人によって、
こんなにも仕事の感じ方が変わるのだと感じています。
今振り返ると、
そこから離れられてよかったと思う一方で、
楽しかった頃の思い出まで
改めて思い出すことができました。
また、自分自身の体力や心の余裕も、
年齢や経験とともに変化していきます。
以前は何ともなかったことが
思っていた以上に負担になってきたり、
反対に、
経験を重ねたからこそできることもあったりします。
一緒に働く人から受ける影響も、
自分自身の変化も、どちらも大きいのだと感じます。
チームワークは、仲が良いだけでは成り立たない
チームワークというと、
仲が良いことや、
みんなで協力し合うことを思い浮かべます。
もちろん、それも大切な要素です。
けれど、医療の現場では、
それだけでは難しいこともあります。
1分1秒の判断や行動の違いが、
命に関わることもあります。
そのため、状況によっては、
互いに確認し、指摘し合うことも欠かせません。
もちろん、そんな状況では余裕がなくなり、
丁寧な言い回しを選んだり、
時間をかけて説明したりできないこともあります。
そして、
仕事に対する考え方も、
得意なことや苦手なことも、
人それぞれ違います。
経験年数や知識、
技術にも違いがありますし、
同じ業務量でも負担に感じる程度は異なります。
だからこそ、お互いの専門性や個性を認め合うことが大切なのだと思います。
自分にはない知識や技術を持っている人。
患者さんへの接し方に学ぶところがある人。
自分とは違う視点から物事を考えられる人。
そうした相手の良いところを認められることは、
一緒に働くうえで大きな力になります。
意見が違っても、
相手の考えや専門性を尊重できること。
それぞれの得意なことを持ち寄り、
苦手な部分を補い合えること。
そうした関係があってこそ、チームとしての力が発揮されるのではないでしょうか。

個人の努力だけに頼らない仕組みづくり
医療現場では、チームで働くためにさまざまな看護方式が取り入れられています。
例えば、2人の看護師がパートナーとなって協力するPNS(パートナーシップ・ナーシング・システム)や、一定期間チームを固定して患者さんを受け持つ固定チームナーシングなどがあります。
また、プリセプター制度のように、
新人看護師を先輩看護師が支える仕組みもあります。
それぞれに特徴があり、
病院によって組み合わせや運用方法も異なります。
こうした仕組みには、
情報を共有しやすくなることや、
判断に迷ったときに相談できること、
経験の浅いスタッフの成長につながることなど、
さまざまなメリットがあります。
一方で、
ペアや担当者との相性が合わない場合や、
特定の人に負担が偏ってしまうこともあります。
例えば、夜勤や日勤でペアを組む場合、
固定することで連携が深まることもあれば、
長期間同じ相手と組むことが負担になる場合もあります。
ペアを組む期間を決めたり、
定期的に見直したりすることも必要なのだと思います。
患者さんの受け持ちについても同じことが言えます。
一人の患者さんを継続して受け持つことには、
信頼関係を築きやすく、
小さな変化にも気付きやすいという良さがあります。
患者さんにとっての安心感や、継続して責任を持って看護できるという面でも、利点があります。
しかし、担当者との関係性によっては、
患者さんにも看護師にも負担が生じることがあります。
継続して関わることと、
一人に負担を集中させないこと。
その両方を大切にできる仕組みが必要なのだと思います。
病院によって異なる看護方式と、その工夫
病院の看護方式にはいくつかの種類があります。
また、看護方式とは別に、新人看護師を育成するための教育体制もあります。
代表的なものをまとめてみました。
| 看護方式 | 主な特徴 |
|---|---|
| PNS(パートナーシップ・ナーシング・システム) | 2人の看護師がパートナーとなり、互いの知識や技術を生かして協力する |
| 固定チームナーシング | 一定期間チームを固定し、チーム全体で患者さんを継続して受け持つ |
| モジュール型継続受け持ち方式 | 少人数のグループに分かれ、患者さんを継続して受け持つ |
| プリセプター制度 | 新人看護師に先輩看護師がつき、知識や技術、職場への適応を支援する |
それぞれに特徴があり、情報共有や継続した看護、スタッフの育成など、さまざまな目的があります。
ただし、同じ看護方式を導入していても、実際の運用方法は病院によって異なります。
ペアを組む期間や組み合わせ、チーム内での役割分担、患者さんの受け持ち方法なども、病棟の特性やスタッフの経験年数、勤務体制によって変わってきます。
また、導入した仕組みが必ずしもその職場に合うとは限りません。
実際に運用してみて初めて見えてくる課題もありますし、時代や職場環境の変化に合わせて、看護方式そのものを見直す病院もあります。
例えば、これまで導入していたPNSから、固定チームナーシングとパートナー制を組み合わせた方式へ変更した病院もあります。
ペアで協力する良さと、チーム全体で支える良さを組み合わせるなど、より良い看護体制を模索していることが分かります。
以前働いていた病院では、試験的にまずは取り入れてみるということも、たくさんありました。
ただ、新しいことを始めるには、それなりに大きなエネルギーが必要です。
目的を明確にすることや、実際に働くスタッフの意見を吸い上げ、導入後も見直しができる仕組みがあること。
そうした準備も、新しい体制を定着させるためには大切なのだと思います。
訪問看護でも、チームで支える仕組みを
病院と訪問看護では、
働き方やチームの作り方が少し違います。
病院では、
同じ場所で複数のスタッフが勤務しているため、
日常的に相談したり、ペアで動いたりすることが比較的容易です。
一方、訪問看護では、一人で利用者さんの自宅へ訪問することが基本になります。
そのため、個人の判断力や経験に頼る部分が大きくなりがちです。
もちろん、一人で訪問するからこそ、
利用者さんとの信頼関係を築きやすい面もあります。

ただ、複数のスタッフで情報を共有したり、
必要に応じて一緒に訪問したり、
得意分野に応じて相談できる仕組みがあってもよいと思います。
一人で訪問していても、
一人で抱え込まなくてよい環境。
担当者が休んだときにも、
ほかのスタッフが安心して対応できる情報共有。
そうした仕組みは、スタッフを守るだけでなく、
利用者さんに継続した看護を提供することにもつながるのではないでしょうか。
ブログ内関連記事:
「一人で背負わないために ―― 複数名訪問という選択」
好き嫌いではなく、客観的に考えられる基準を
チームで働くうえで、
もう一つ大切だと感じるのが、
最低限のルールや判断基準を持つことです。
例えば、特定の患者さんの担当から外れたいと希望するスタッフがいたとします。
その理由は、単純な相性の問題かもしれませんし、
精神的な負担や業務量、看護上の難しさなど、
さまざまな事情が考えられます。
しかし、その背景を十分に確認しないまま、
「わがままを言っている」
「好き嫌いで担当を変えたいのだろう」
と受け取られてしまうこともあるかもしれません。
人と人との関係には、表面に見えていることだけでは判断できない部分があります。
もちろん、すべての希望をそのまま受け入れることは難しいと思います。
また、すべての人に理解してもらうことは、
残念ながら不可能です。
だからこそ、担当期間や業務分担、担当変更を検討する際の基準など、最低限のルールを設けておくことが大切なのだと思います。
個人の感情や主観だけで判断するのではなく、状況を確認し、客観的に考えるための土台をつくること。
そうしたルールがあることで、スタッフ個人を守れる場面もあるのではないでしょうか。
チームで働くということは、個人の努力や我慢だけで成り立つものではないと思います。
理想を現実にするために、まず必要なこと
ここまで、ペア制度や担当制、情報共有など、
チームで働くということに触れてきました。
ただ、こうした仕組みを実際に機能させるためには、
大前提として、必要な人員が確保されていることが欠かせません。
どれだけ良い看護方式を取り入れても、看護師の人数が足りなければ、ペアを組むことも、担当を分散することも難しくなります。
むしろ、限られた人数の中で
新しい仕組みを導入することで、
かえって業務負担が増えてしまう可能性もあります。
そう考えると、チームづくりには、個人としてできることだけでなく、組織や社会全体で取り組まなければならないこともあります。
| 視点 | 必要な取り組み |
|---|---|
| 個人 | 情報共有、声を掛け合うこと、互いの専門性を認めること、困ったときに相談すること |
| 組織 | 適切な人員配置、給与・福利厚生の改善、休暇を取得しやすい体制、業務負担の見直し |
| 社会 | 人材確保に向けた制度や財源の整備、医療・介護・保育などを支える仕組みづくり |
以前、警察官の人材不足が問題になり、採用や定着に向けて、給与や手当、福利厚生、職場環境などの見直しが進められていることを知りました。
人材を確保するためには、働く環境そのものを改善していく必要があるということなのだと思います。
医療や介護、保育の現場でも、
同じように人手不足が続いています。
ただ、それぞれの職種で制度や財源の仕組みが異なるため、単純に比較することはできません。
医療や介護は診療報酬や介護報酬など、保険制度や公的な財源と深く関わっています。保育にも公的な給付や予算の仕組みがあります。
そのため、必要だと分かっていても、すぐに大幅な待遇改善や人員増加につなげることが難しい事情もあるのだと思います。
正直なところ、これからの社会保障や財源のことを考えると、不安は大きいです。
それでも、人材不足を個人の頑張りや使命感だけで補うのではなく、働く人を確保し、長く働き続けられる環境を整える方向へ変わっていくことには、わずかな希望も感じます。
むしろ、変えていかなければならないことですよね。
どんなに理想的なチームを考えても、
それを支える人がいなければ成り立ちません。
理想を語るだけで終わらせないためにも、
今ある人員や環境の中で何ができるのか、
そして組織や社会として
何を変えていく必要があるのか。
その両方を考えていくことが大切なのだと思います。
おわりに:和して同ぜず
実は、父がステーションの立ち上げの際に、
「和而不同(わじふどう)」という言葉を書いてくれました。
「和して同ぜず」という言葉です。
周囲と調和しながらも、
むやみに同調することなく、
自分の考えや個性を大切にする。
そんな意味があります。
その書は、今でも居間に大切に飾っています。
チームで働くことを考えると、この言葉には大切なことが込められているように感じます。
それぞれ、得意なことも、苦手なことも、
仕事に対する思いも違います。
自分の考えを持つことと、周囲と協調することは、
決して相反するものではありません。
違うからこそ、互いに学べることがあり、
補い合えることもあります。
医療のチームは、うまくかみ合ったときには、
大きな力を発揮します。
やりがいや達成感を共有できることも、
チームで働く魅力の一つです。
一方で、人と人が一緒に働く以上、難しさもあります。
そのためには、個人の意識だけでなく、
互いを尊重できる組織のあり方や、
それを支える社会の仕組みも大切です。
「和して同ぜず」。
この言葉は、
医療のチームだけでなく、人と人が共に働く
さまざまな場所にも通じる考え方なのかもしれません。

“Harmony Without Conformity”
Calligraphy by 筑芳 (Chikuho)
「和して同ぜず」は、『論語』に由来する言葉です。
人と調和することを大切にしながらも、むやみに周囲に同調するのではなく、自分自身の考えや信念を持つことを意味します。
人それぞれに異なる価値観や考え方があるからこそ、互いを尊重しながら、自分らしさも大切にする。
そんな人との関わり方を教えてくれる言葉です。
“Harmony Without Conformity”
This phrase comes from the Analects of Confucius.
It teaches us to live in harmony with others without simply following the crowd, while maintaining our own thoughts and beliefs.
It reminds us that we can respect different perspectives while staying true to ourselves.

コメント