はじめに
前回は、「子宮と卵巣の役割の違い」というテーマで、
それぞれの働きについて見ていきました。
その中で少し触れたのが、卵巣と卵管の関係です。
実は、卵巣と卵管は直接つながっていません。
でも、卵巣で育った卵子は排卵されると卵管に入り、そこで精子と出会うことがあります。
では、つながっていないのに、
卵子はどうやって卵管に入るのでしょうか?
今回は、
卵子が卵巣から排卵され、卵管へ取り込まれ、受精が起こるまでの流れを見ていきます。
卵巣と卵管は、実はつながっていない
まず、卵巣と卵管の位置関係を見てみましょう。

卵巣は左右に1つずつあり、
子宮の左右に位置しています。
卵管は、子宮の左右から伸びている細い管です。
卵管の先端は卵巣の近くまで伸びていますが、
卵巣と直接つながっているわけではありません。
卵管の先端には
「卵管采(らんかんさい)」と呼ばれる、指のような突起がいくつもあります。
この卵管采が、排卵された卵子を卵管へ取り込むことに関わっています。
卵管の先には「卵管采」がある
卵管は、子宮側から見ると
「子宮に近い部分」「峡部」「膨大部」「漏斗部」などに分けられます。
このうち卵巣に近い先端部分が漏斗部で、
その先には卵管采があります。
卵管采は、卵管の先端にあるひらひらとした指状の構造です。

排卵の際には卵巣の近くに位置し、
卵巣から放出された卵子を卵管内へ取り込むのに重要な役割を果たします。
つまり、卵巣と卵管は直接つながっていなくても、
卵管采などの働きによって、排卵された卵子を卵管へ取り込む仕組みがあるのです。
そもそも「排卵」って何?
「排卵」について簡単に説明すると、
卵巣の中で発育した卵胞から、一般に「卵子」と呼ばれている細胞が卵巣の外へ放出されることです。
ここで少しだけ医学的な話をすると、
排卵のときに卵巣から放出されるのは、
厳密には「二次卵母細胞(にじおぼさいぼう)」と呼ばれる段階の細胞です。
二次卵母細胞は、精子が侵入すると減数分裂を完了し、受精が成立する段階へ進みます。
(減数分裂とは、卵子や精子をつくるときに染色体の数を半分にし、受精によって元の数に戻せるようにする特別な細胞分裂です。)
今回は少し難しくなるので、この先は分かりやすく「卵子」と呼んでいきます。
卵巣の中では、卵子を包む「卵胞」という構造が育ちます。
卵胞が十分に発育すると、
その中の卵子が排卵によって卵巣の表面から放出されます。
ここで少し意外なのが、
卵子が卵巣からそのまま卵管の中へ入るわけではない、ということです。
卵巣と卵管の間には直接のつながりがないため、
排卵された卵子はいったん腹腔内へ放出されます。
→腹腔内(ふくくうない)とは?
腹腔内とは、お腹の中にある、臓器が収まっている空間のことです。
排卵された卵子は、卵巣からこの腹腔内へいったん放出され、その後、卵管へ取り込まれます。

ここで、ちょっと気になることがあります。
「卵子って、毎月1個だけなの?」
「左右の卵巣から、交互に出てくるの?」
実は、どちらも
「必ずそう」というわけではありません。
通常は1回の月経周期につき1個の卵子が排卵されますが、まれに複数の卵子が排卵されることもあります。
また、排卵する卵巣も、右・左ときれいに交互になるわけではありません。
どちらの卵巣から排卵されるかは、基本的に毎回決まっているわけではないのです。
そして、もう一つ気になるのが、
「もし卵管采が卵子をうまく取り込めなかったら?」ということ。
取り込まれなかった卵子は卵管へ入ることができず、
やがて体内で変性・吸収されていきます。
つまり、卵子は排卵されたら必ず卵管に入るわけではありません。
卵管采に取り込まれ、卵管の中へ進むことができて、はじめて次のステップへ進みます。
そう考えると、
卵管采が卵子を取り込むという仕組みは、意外と重要な役割を担っていることが分かります。
腹腔内に出た卵子は、どうやって卵管へ入るの?
「腹腔内に出る」と聞くと、
少し不思議に感じるかもしれません。
卵子は卵巣から放出されたあと、
卵管の先端にある卵管采によって卵管内へ取り込まれていきます。

卵管の先端には卵管采があり、
排卵された卵子を卵管へ取り込むのを助けます。
さらに、卵管の内側にある線毛の動きや
卵管の筋肉の働きなどによって、卵子は卵管の中を運ばれていきます。
卵管采は、ただ「卵子を待っているだけ」の構造ではありません。
排卵の際には卵巣の近くに位置し、
卵子を卵管へ取り込むために働いています。
卵管に入った卵子は、どうやって進む?
無事に卵管へ入った卵子は、
今度は卵管の中を子宮に向かって移動していきます。
ここでも、卵管は単なる「通り道」ではありません。
卵管の内側には、
細かな毛のような「線毛(せんもう)」を持つ細胞があります。
この線毛が一定方向に動くことで、
卵管内の卵子の移動を助けています。
さらに、卵管の壁にある平滑筋の収縮も、
卵子や受精後の胚を移動させることに関わっています。

つまり、卵子は自分で泳いでいるわけではありません。
卵管の中にある線毛や筋肉の働きに助けられながら、少しずつ運ばれていきます。
私たちが普段イメージする「卵子が卵管を進んでいく」というより、
卵管そのものが卵子を運ぶために働いていると考えるほうが近いのかもしれません。
受精は、どこで起こる?
では、卵子と精子が出会うのは、どこなのでしょうか。
一般的に、受精が起こる場所は卵管の
「膨大部(ぼうだいぶ)」と呼ばれる部分です。
精子は腟から子宮を通り、卵管へと進んでいきます。
一方、卵子は卵巣から排卵され、
卵管采に取り込まれて卵管へ入ります。
そして卵管の中で卵子と精子が出会うと、
受精が起こります。
受精によってできた受精卵(接合子)は、
その後、細胞分裂を繰り返しながら卵管を移動し、
子宮へ向かいます。

精子だけが卵子を探しに進んでいき、
卵子はその場で待っているようなイメージがあるかもしれません。
でも実際には、精子は子宮から卵管へ進み、
卵子も卵巣から卵管へ取り込まれて子宮の方向へ進んでいきます。
そして、卵管の中で両者が出会うことで、受精が起こります。そう考えると、なんだかドラマチックですよね。
卵子は、いくつもの仕組みに支えられて移動している

こうして見てみると、
卵子が卵巣から卵管へ入るまでには、いくつもの仕組みが関わっていることが分かります。
卵巣と卵管は直接つながっていない。
それでも、排卵された卵子は
卵管采によって卵管へ取り込まれ、
卵管の中では線毛運動や筋肉の働きによって移動していきます。
そして、卵管の膨大部で、精子と出会い受精が起こります。
「卵巣から卵子が出て、卵管に入って、受精する」
言葉にすると簡単ですが、
その一つひとつの過程には、
体の中に備わったさまざまな仕組みが関わっています。
人体は、知れば知るほど
「どうしてこんな仕組みになっているんだろう?」と思うことがたくさんあります。
今回の「卵巣と卵管はつながっていない」という話も、その一つではないでしょうか。



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